MAD CATとレプリカ

<狂気猫と偽者>
 どう考えても僕の特質はストラトキャスターと言うギターに合っているのに、なぜかメインギターはいつもテレキャスターになってしまう。どちらもレオ・フェンダーと言う天才が世に送り出した傑作ギターだがその成り立ちはまったく違っている。テレキャスター(以下テレキャス)は50年代頭に世界で最初の量産型ソリッドエレクトリックギターとして世に生を受ける(1949発表)。機能的で合理的実用性を重視しているところは後のレオフェンダー作品すべてに共通している。ストラトキャスター(以下ストラト)はそれより5年ほど下った時代(1954年)により機能を充実させたモデルとして生まれるている。サーフブーム時代にはジャガーやジャズマスターの陰に隠れて生産中止されそうになるほどだったらしいが今のロックギターのメインストリームであると言うことはわざわざ口に出して言う必要さえないほど確固とした事実だろうだろう。乱暴な言い方になるが、テレキャスでもなくレスポールファミリーでもなくその他のギブソン変形的なフォルムのギターでもなく、リッケンバッカーやグレッチでもなく、革新的ないくつかのスタインバーガー系でもないギターで、ロック式のアームを付けているすべてのギターのほとんどはストラトキャスターのデザインコンセプトの亜流と言ってもいいかもしれない(ギターの良し悪しのことではなくコンセプトのことを言っています)。
 例によって前置きが長くなってしまいましたが、テレキャスはストラトやその他のギターに比べてシンプルだと言うことが云いたかった訳です。『ロッケンローラ』なギターなのですよ。もちろんロックン・ロール以外でもみんな使っています。でもね、このシンプルさが使う音楽のタイプを(と言うより使う人を)選ぶわけです。ダイレクトに巧い下手が(ギター側から言うと『ひき味』)が出るわけです。寿司とおんなじですね。酢飯の上にネタが乗っている。誰にでも出来そうだけど握る職人さんによってめちゃくちゃ美味しくもなるし不味くもなる。シンプルなだけにその感じが微妙なんですよ。
 で、これは今のメインギターじゃないんですがすごく古いH.S.アンダーソンというメーカーのMAD CATと言われるモデルです。70年代初期の作品ですね。日本が生んだギターデザインの中では最高のものではないでしょうか?すでに原型のテレキャスのデザインを超えています。70年代の雑誌広告ではムッシュ・かまやつがこのギター持っていました。そしてMAD CATのプレーヤーで一番有名なのは何と言ってもプリンスです。ね、並みの個性では弾けないいでしょう?
madcat1.jpg
ネックの裏もトラトラです。
madcat2.jpg
これは一時復刻版が出ました。ビルローレンスから1機種とホーナーからも似たのが出てましたね。
あとは、下図のビル・ローレンスの廉価バージョンであるビル・ブラザースです。
bb-mad1.jpg
安かったのでおもわず衝動買いしましたが…↑ヤフオクで即転売しました。
こちらが本物でトラ杢です↓。ラッカーじゃなくて(さすがオールドジャパニーズ)ニス塗りです。
madcat3.jpg
こちら↓は偽者。一見良くみえますが木は安っぽい軽い材でトラ杢目もグラビアプリントです。
bb-mad2.jpg
音の差も歴然です。でもMAD CATはテレキャスとしては良い音するわけじゃなんですよ。『ポコンと引っ込む』という…巧く表現できないですが、まあカッコイイ音出すのは難しいです。
しかしプリンスには似合います。ムッシュかまやつにも…そこまで個性を出し切れない僕は結局ギターに飲まれてしまうので、こいつは手放してしまい今はうちにありません。
 強烈な個性の女の子と付き合ったあとの脱力感と言うか放心状態の用のものがしばらく僕の心を占めていましたが、やがて、別のベストフレンズ(他のギター)に気が向くことになります。男っていくつになってもばかだなぁ。